読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

日常茶飯本

“暮らしの本”愛好家の日記

“お片付けテンション”が上がる本。/『暮らしを、整える』

住の本

暮らしを、整える: 部屋と頭と心のお片づけ (私のカントリー別冊)

暮らしを、整える: 部屋と頭と心のお片づけ (私のカントリー別冊)

 

「片付けたい」気持ちに、追い風をくれる言葉。

この本、まず、第一章の冒頭の文章が秀逸です。 

「家具や器やファブリックや小さな雑貨。

これまで、私たちは足し算で暮らしの豊かさをつくってきました。

でも、本当に心満たされる世界は、今までの数式からは導き出せない…。

どこかに何かを買いに行かなくても、いらないものを処分して、

残った物を整えれば、新しい世界が始まる。

その行程が片付けです。」

 

なるほど、そうだなあ〜と膝を打つ感じ。そして、どことなく詩的です。

この文章、おそらく企画・編集の一田憲子さんという方が書かれたものだと思うのですが、いま「暮らし系」の本の作り手のなかで、時代にフィットしてる方の一人じゃないかなと、個人的には思います(ちなみに「大人になったら、着たい服」の企画もされてます)。奥付を見て、一田憲子さんのクレジットがあると、だいたい面白いので。

 

さて、今、書店の暮らしの本コーナーに行くと、本当に「片付け、整理、収納」の本が花盛りです。ここ数年、ずっとそのブームが続いているのには、いくつもの要因があると思いますが、大きな理由としては、やはり物があふれる時代であること、そしてそれを必ずしも良しとしない(少なくとも野放しにしておくのは、いささか気が咎める)という空気なのではないかと思います。特に震災後、それが顕著になっているように感じることがよくあります。

 

で、多くの人が片付けの本をどんなときに読むのかというと「お片づけ気分」を上げたいときではないでしょうか。もちろんハウツー的な、「整理・収納の本」を読む場合はそのテクニック、効率の良い片付けの方法を知りたい、という場合もあると思うのですが、この「暮らしを、整える」のような、いかにもおしゃれな印象のお片づけ本を手にするとき、私たちが求めるのは、はたして純粋な「片付けのレシピ」なのでしょうか。

 

たとえば「料理」とか「ファッション」の本を読む場合は、その本を「読むことそのもの」が純粋な楽しみ、もしくは、先ほど挙げたように、アイデアを得るためお勉強的に読む、という方が多数派だと思うのですが(いわゆる「指南本」ですね)、「片付け」の本に関しては、「さあ、今から片付けるぞー!」と、“お片づけテンション”をあげるために読む、という人の数が、かなり多い気がします。

片付けって結局のところ、物を家のどこに置くのか決めて、そこに戻すこと(要は“物の住所を決める”ということ)ですよね。それに尽きます。にも関わらず、永遠のテーマとして、幾度も雑誌や本などで取り上げられるのは、「片付ける」ために「何か背中を押してくれるもの」が必要とされるから、だと思えてなりません。だから定期的に「断捨離」とか「ときめくお片づけ」みたいな流行ワードも出てくるのでしょう。

 

片付けが苦手な人(私もその一人です…)にとっては、整理や収納のテクニックどうこうよりも、まず片付け(という億劫なこと)を、何とか「楽しみ」に転化することが必要。そして、そのためには、ちょっとしたスパイスが必要だと思うのです。そして、この本はその「スパイス」にぴったり。

色々な人が出てくるのもいいですね。オムニバス的な作りだと、この人のやり方ならできそう!とか、素敵だな〜と思える人に当たれる率が上がります。

たとえば「出しっぱなしでも、カッコよければそれでいい」というのは雑貨店「ジャンティーク」を営む内田文郁さん。何て頼もしいお言葉でしょうか(ほんと、とても格好いいお部屋でした。計算しつくされた無造作感というか)。

 

とはいえ、この本に載っている片付けのアイデアには、実際に役立つ有用なものも数多く散りばめられており、たとえば「引き出しは、モノではなくコトで分類する」「調味料はミニサイズにするなど、ライフスタイルの変化により必要なサイズにシフトする」など、トップの前原なぎささんの「ものを増やさない10の法則」の幾つかなんかは、とても参考になりました。「収納は分析から始まる」という考えに裏付けされた法則は、とても合理的です。

 

そして「暮らしを整えることは、心を整えること」という、この本の背骨的な言葉のあるページは、何度も読み返しています。「くるみの木」のオーナーの石村由起子さんの言葉ですが、石村さんの一日は、真っ白なふきんを、一枚ずつ丁寧にたたむことから始まるそう。

「片付けは、一歩先の暮らしを変える力をもっています」という言葉もいいですね。こういった暮らしの名言を時々思い返して、良い言葉だなあ、と味わいながら、私も日々、洗濯物をたたんでいます。

 

一冊の本で、一通りの片付けマニュアルを知りたい…という方には不向きかもしれませんが、片付けのきっかけやヒント、そしてやる気をもらいたい!という人には、ぴったりの一冊だと思います。

 

ほかにも、“お片付けテンション”が上がる、お気に入りの本を2冊ほど。

身軽に暮らす ~もの・家・仕事、40代からの整理術 (COMODOライフブック)

身軽に暮らす ~もの・家・仕事、40代からの整理術 (COMODOライフブック)

 

 40代〜70代の個性豊かな方々が「身軽に暮らす」ために、どうすればいいかを探りながら進んで来た、それぞれの軌跡が読める本です。特に、編集者の山崎陽子さんの

「私ね、すてきなものは一生買い続けると思うんです。一方で、ものを増やしたくない、減らしたいという思いもある。だからひとつ買うためには、ふたつ手放すぐらいのつもりでいます」

という、静かな決意表明のような言葉に、はっとさせられました。

 

シンプルに暮らす整理術 (だいわ文庫)

シンプルに暮らす整理術 (だいわ文庫)

 

整理収納が大好きで、“片づけを考えるだけでウキウキ、わくわくする!”というクニエダヤスエさんの本。この本を読むと、まるでクニエダさんが憑依したような(?)気持ちになって、さくさくお片づけがすすみます。この本の初出は2004年ですが、今も古びないテーブルコーディネートのアイデアを読む楽しみも。 

 

ここしばらくのあいだ、楽しみながらお片づけ生活を続けていられるのは、これらの本たちのおかげかも、と、しみじみ思う春の朝でした。