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日常茶飯本

“暮らしの本”愛好家の日記

“ちょうどいいクローゼット”考。/天然生活 2015年10月号

天然生活 2015年 10 月号 [雑誌]

天然生活 2015年 10 月号 [雑誌]

 

クローゼットから見る、時代の変化。

 

天然生活の10月号は、毎年恒例となっている“お洋服特集”です。

私の手元にあるのは、2012年から始まった「年間、お洋服計画」の2012〜2014年号と、2010年の「大人の定番服」の特集号。今月号を購入し、バックナンバーも併せて読み返してみました。

これら5冊をあらためて読み直すと、「年間、お洋服計画」が始まった2012年の10月号が、最も記憶に残る一冊だったな、という印象です。今なお手元に残しておきたい、魅力のある号です。

 

その理由はやはり、ワードローブを「年間」を通して考えるという発想が素晴らしかったのと、「クローゼットの内訳」を「春夏」「秋冬」「通年」と分けて、カットソー◯◯枚、シャツ◯◯枚、スカート◯◯枚…と詳細に記したことが何より新鮮でした。それまで雑誌では、いい感じのイメージカットなど、感覚で捉えられることの多かった“クローゼット”というものが、はっきり数値化されたことに驚いたのを覚えています。

そして2012年当時は、ナチュラル系のファッションそのものに新鮮味があり、「ナチュラルなテイストの服」というくくりのなかで、さまざまなコーディネートを開拓していく余地も、まだまだ残されていたのかなと、いま振り返ってみて感じました。

 現在、「ナチュラルファッション」というジャンルも雑誌などに一通り出尽くして、落ち着くべきところに落ち着いた感があるため、どうしても今月の一冊だけを取り上げると、少しずつトーンダウンしているような印象は否めません(カタログ的なページも多いので、そのブランドを好きな人以外だと読み込めない感じもあり)。同じテーマを取り上げつつ、マンネリにならないように紙面を更新していくのは、かなり難しいのだろうな〜と感じます。

 

けれども、今回のように数年にわたって見直すという読み方をすると、一冊を単体で読むのとは、また違う楽しみがあるように思えました。 

こんな風にひとつの雑誌が、長いスパンで恒例の特集を組んでいれば、そのときどきにどういったことが「良し」とされているかの変化が感じ取れるのも、まずは興味深いところです。たとえば、今年の号はやはり、“すっきり” 推しだなあとか。ここしばらく、ミニマリストブームとか、「なるべく少ない数の服を持ちたい」傾向が加速していますしね。

ちなみに、こちらが2012年号。表紙だけを見比べてみても、その違いが見て取れます。 

天然生活 2012年 10月号 [雑誌]

天然生活 2012年 10月号 [雑誌]

 

とはいえ、最新号の中身を読んでみると、登場する方のクローゼットが、それぞれよく考えられているにせよ、表紙のイメージのように(そして流行の「すっきり」本のように)色々な意味で完全に、“すっきり”  管理されているわけでないこともわかります。当然といえば当然ですが、生身の人間のクローゼットなので。

やはりそこが「クローゼットをどのように保つのが理想的なのか?」ということのポイントであるという感じがしました。 持ち主が日常生活を営んでいる以上、たとえば「数を減らして終わり」なのではなく、その中身は常に流動的なわけです。まあ、故スティーブ・ジョブズのように、アイコンとしての「黒タートル(ちなみにデザインは三宅一生)」のみを着続けた、例外的な人もいるわけですが…。

 

さて、前置きはこのくらいにして、過去の号と読み比べてみての、2015年最新号の感想を色々。

 3年続いた「年間、お洋服計画」は終わって(個人的には残念)、今号は「ナチュラルなすっきり服」というサブタイトルの特集になっています。

が、おそらく最も人気があるコーナーだと思われる「クローゼットの中身」のページは引き継がれていて一安心。今年も興味深く読むことができました。

 

今回いちばん印象に残り、素敵だなあと思ったのは、イラストレーターの山本祐布子さんのクローゼット

個人的に世代も近く、コンパクトな印象ながら、本文中にも書かれている通り「いまの暮らしに必要だと感じる服は、過不足なく入っています」というのがよく伝わる、「ちょうどいい感じ」と思えるクローゼットでした。

パリで見つけたという、スモーキートパーズのピアスや、小鳥柄のストール、ウエディングドレスをリメイクしたワンピースなど…一つひとつのアイテム数は決して多くないけれど、どれも山本さんの“自分軸の美意識”で選び抜かれているのが伝わってきました。

また、10年以上愛用しているハイブランドの上質なものと、ファストファッションのもの、ドレッシーなヴィンテージのドレスとカジュアルなスニーカー、それらが無理なく混在している感じがとても良かったです。

「今と昔、ふたつが重なるクローゼット」というキャッチがふさわしく、“クローゼットは人なり”とあらためて思え、刺激を受けたページでした。

 

他のお二人のクローゼットも、それぞれに興味深かったです。

イデーのディスプレイ担当・小林夕里子さんは、かなり多くのお洋服を所有されていますが(ニットだけで約60枚!)、収納をシステム化して、きちんと把握しているという整理術が紹介されていました。浅型の収納ケースを愛用し、キュッとたたんで立てて収納。着る前に、アイロンをあててから着るという方法をとっているそう。

これは、服が好きで、かつ着ることに手間も時間もかけられる人にのみ、実現が可能なクローゼットだなと思いました。もちろん人によると思いますが、自分自身も20代〜30代初めくらいの時期は、今よりもっと多くの洋服を持っていたし、また、持っていたかった、というのを思い出しました。

もし今後、ライフスタイルが変化していけば、アイテムは減って行かざるを得ない(そうでないと秩序が保てない)と思うし、そういうわけで、アイテム数の多さに「若さ」を感じたクローゼットでした。

逆に、ギャラリーfeveのオーナーである引田かおりさんのクローゼットは、中身が空っぽのかごが置かれていたり、引き出しの中にも相当余裕があるというのに驚きました。「まだ見ぬ素敵なもののために、キープしてある場所」というのが、すぐには難しそうですが、将来的には取り入れてみたいと思えるアイデアでした。

 

ほかには、巻頭の「大人のおしゃれ『すっきり』9カ条」轟木節子さんのスタイリング(p16のシックなリュック&ショートブーツのスタイルなど)も、日々の着こなしのヒントになりそうでした。轟木さんは、とても理論のしっかりしたスタイリストの方だという認識があります。

2012年号には、ご自身のワードローブも掲載されていましたが、「ファッションが本当に好きなんだなあ」とわかる、その惚れ込みようが伝わる素敵な服の数々でした。『毎日のナチュラルおしゃれ着こなし手帖』など、著書も持っていて、色の合わせ方や、シルエットの作り方などの参考に、ここ数年愛読しています。

毎日のナチュラルおしゃれ着こなし手帖 (e-MOOK)

毎日のナチュラルおしゃれ着こなし手帖 (e-MOOK)

 

ナチュラル系ブランドの服は、わりにゆったりした(体型が出ないような)シルエットのものが多かったり、そのままでは「すっきり」着るのが、そこそこ難しいものが多い気がします。「ナチュラルなすっきり服」というタイトルそのものが、多少の矛盾をはらんでいるというか。

単に「すっきり」したスタイルを目指すのであれば、ジル・サンダーみたいな削ぎ落とされたデザインのブランドの服を着るか、あるいはもっと手軽に、ユニクロ無印良品のアイテムでコーディネートしてしまえばいいわけです。でも、それだけではたぶん物足りないと感じる人が多いのですね(ジル・サンダーに関しては、もちろん素敵ではあるけれど、全身揃えるとなると、言わずもがな相当な経済力が必要ですし…。ユニクロジル・サンダーのコラボ、+Jが懐かしいです。そういえば、10月から展開予定の、クリストフ・ルメールユニクロのコラボも楽しみ!)。そうはいっても、お気に入りのラインの服を、出来るだけスッキリ着たい!という要望があるから、こういう特集が組まれるのかなと思ったりします。

私自身は、あまり重ね着はしないし、サイズ感の合った服をシンプルに着ることが好きなのですが、素材を重視して服を探しているときなど、やはりナチュラル系のブランドに行き着いたりするので、ときどきそういう服を着たいと思うときのために、今回の轟木さんの着こなし法に、アイデアをもらえる気がしました。 

 

あと、その他の記事についても少々。

「朝の京都」特集のなかの「私の好きなモーニング」や、朝市の記事など、京都を旅したときのお楽しみといった情報がたくさんありました。伊藤まさこさんのおすすめ、今西軒のおはぎが見るからに美味しそう。食べてみたいです。

料理ではウー・ウェンさんの夏のあえ麺」なども、晩夏にぴったりで食欲をそそられました。ウーさん家の常備菜という肉味噌を作ってみようと思います。本当に、枝豆&中華麺と合いそう。

モノクロページの「自宅で非難する防災計画」も興味深かったです。食の備蓄の基本的な考え方である「ローリングストック」という方法(日々食べているものを多めに買い置きし、ふだんどおりに食べながら不足分を買い足していくという方法)に、なるほど!と思い、さっそく実生活で意識したいなと思いました。「非常時でも日常に近い生活を送ることが、より快適な避難生活につながります」という言葉に納得。堅実なつくりの、良い記事でした。

 

さて、クローゼット考に話はもどって。

今回のように雑誌を何冊かまとめて読むことが好きなので、なかなかバックナンバーを手放すことができません。すっきりとはほど遠い私の蔵書たち…。しかし、この本棚を客観的に眺めてみれば、「好きな物を手元に置いておく自由もあっていい」と私は思っているわけですね。これは、クローゼットにも通じる想いのような気がします。

 

とはいえ、たとえば何年も着ることのない洋服を、あんまり数多く所有しているのを善とも思えないわけで…そういう部分をバランス良く調整すべく、日々、あれこれ工夫する心も持っていたいなあとも思います。

“ちょうどいいクローゼット”は、時代や自分の変化に添って、移り変わっていくもの。毎年、これらの『天然生活』10月号に掲載されているような、持ち主によく考えられたクローゼットを見ると、私も自分の「中身」をほどよくキープしたいなと、気持ちが(少なくとも気持ちだけは!)新たになる、貴重な号です。

2013年ではバッグデザイナーの唐沢明日香さんのワードローブの揃え方が参考になったし、2014年ではモデルの楓美さんの「ふだんとお出かけの服」の、伸びやかなおしゃれが好印象でした。毎年、それぞれに読み込みたい記事があり、発見があります。

 

来年の『天然生活』10月号も、この「お洋服特集」の継続を希望しつつ…爽やかな気分になりたくて、久しぶりにクローゼットから引っ張りだした、レモンイエローのカットソーに袖を通した今日でした。