日常茶飯本

“暮らしの本”愛好家の日記

小学校入学に不安を抱える、すべての人へ。/『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』

学校と一緒に安心して子どもを育てる本: 小学生保護者の心得 (教育単行本)

学校と一緒に安心して子どもを育てる本: 小学生保護者の心得 (教育単行本)

 

「自分らしく生きること」と「世界と調和すること」の狭間で。

久々の、ブログ更新です。

2017年は、少しずつですが、仕事を再開したり、縁あって茶道を習い始めたりと、新たな出来事が多々あり、なかなか更新することができませんでした。ですが、その間にもまた、たくさんの良書との出会いがあり、この春からは、また少しずつ、大切な本について綴っていけたらいいな、と思っています。

 

さて、今回の本。私がこれまでに人に勧めたなかでも、「この本を読んで良かった!」という声を、非常に多く返したもらえた本です。

 

この本の何が良いかというと、ともかく「現実的」ということに尽きます。

子どもの小学校生活で起こりうる、あらゆる事例に対して、「こういうときは、こうする」という、実際に困った時に(その多くは即効性を持って)役立つという方法が、あますところなく書かれています。そして、その方法には血肉が通っており、通りいっぺんのものは一つとして(!)ないと言っていいのでは、と、一読した時に感じました。そして、表紙にもある通り、この本は私にとっても、“バイブル”の一冊として、何か気になることがあるたびに、何度も読み返しています。

 

まず、初めにはっとしたのは、p5の「先生の当たりはずれ」についての記述です。

「先生の当たりはずれという言葉をときどき耳にします。(中略)もちろんご自分のお子さんが先生からつらい目に遭わされていたり、困っているのに何も助けてくれなかったりすれば、はずれの先生だと思うことでしょう。しかし、それほどひどいことを直接されるわけでもないとしたら、みなさんは先生の良し悪しを何で評価されるのでしょうか。(中略)本当に自分の子どもにとって良い先生のなのかではなく、感覚的な好き嫌いだけで判断していませんか?

たしかに、そういう部分があるな、と。日頃、どれだけ自分サイズの物差しで、人や物事を認知しているかを指摘されたような気がしました。

 

また、すごいな、と、その対応の見事さに舌を巻いたのは、p127〜128の子供が学校でたたかれたり、暴力を受けている時に、学校にどうはたらきかけるのか、という相談の答えでした。これが圧巻で、ここを知れるだけでも、この本を読む価値は十分にある、と思えます。

 

勉強面に関しても、多くのヒントが散りばめられています。たとえば一年生の算数のところで、繰り上がりと繰り下がりの計算の数は、それぞれ36個しかない、だから反復練習して暗記してしまう、など、なるほど!というアドバイスがいくつもあり、これらを主に知りたい、と思う読者にも、しっかり答えています。

 

そして、最も重みを感じた箇所。それは、p103〜の発達障がいの子どもたちへの対応の章でした。p114〜115には、こうあります。「立ち歩いたり声をあげたりすることは、その子がその子らしい特性を発揮していることでもあります。自分が自分らしく振る舞うと叱られたり注意されたりするということは、自分自身を否定されていることになります。」

衝撃でした。

ここに書かれていることを考えることは、小学校という場の話だけではなく、誰にとってもごく身近な、それこそ家庭や職場、地域や近所付き合いなどを考える上でも、避けては通れないことではないかと。あらゆるコミュニティの中で、どう生きて行くか、に繋がっていくことのように思えました。

 

程度の差はあれども、私たちは、周りの人との関係の中で「自分らしく生きること」と、「自分が生きる世界に(なんとか)調和すること」との狭間で揺れ動いています。そして、誰しも否定されずに、生きる権利があるのだと、そのことを忘れないようにしたい、と思いました。うまくやれない時があるとしても。たゆまずに。

 

今日は、明日(書いているうちに、日にちが変わってしまいましたが)、子どもが小学校入学を迎える友人2人が、家に遊びに来てくれました。うち1人には、以前この本を紹介しており、もう1人にもまた、この本を交えて、話をしました。

 

あとがきにも「この本を読んで、子育ての不安が少しでもなくなってくだされば」との作者の言葉がありますが、その通りの、とてもあたたかな本です。

 

自分が「良いな」と心から思える本を、そしてその想いを、誰かにバトンできたとき、私は「本があって、本当によかったな」と、いつも思います。そして、それがまた、次なる本への出会いを、呼び寄せてくれているようにも。

 

この春、入学する子を持つ、すべての方に贈りたいなと思える、そんな本です。